仕事へのモチベーション「動機」と「やる気」
「動機」と「やる気」
モチベーションは一般的に「動機」「やる気」という意味で使われています。
しかし「動機」と「やる気」は同列ではありません。「動機」があって「やる気」に繋がるものです。「動機」があるから「やる気」が出る、「動機」は「やる気」の「もと」と認識すると、整理しやすくなります。
「もっとやる気を出して仕事をしなさい」などと言われても、自分だけで簡単にコントロールできるものではありません。そこには「やる気」の「もと」が必要です。「やる気」は個人が自在に出せるものではなく、出るように組織が導くものです。
そこで会社は、社員が「やる気」を出すように「動機」にアプローチすることになります。これが「動機付け」です。
「やる気」の重要性
「やる気」の有無で仕事にはどのような影響が出るでしょうか。
例えば、出勤前に家族とケンカし、通勤電車でからまれ、会社の階段で転んでケガをした、となれば、午前中は仕事をする気にもならないかもしれませんが、逆に、朝から気分の良いことがあり、さらに夜には楽しみな食事会が控えている、ということであれば、俄然「今日は仕事も頑張ろう」と張り切るかもしれません。
午前中に10の仕事をすべきところ、前者の場合は8しかできないかもしれませんが、後者の場合は12できる可能性もあります。これを部署全員の毎日に拡大すると、現在10人で進めている仕事に12人を要することになったり、8人で済むようにもなる訳です。
つまり社員の「やる気」は生産性に直結しており、ひいては利益の増減、会社自体の発展・衰退にも影響してくることなのです。
日常の些細なことであっても「やる気」には影響を及ぼしています。これが働くことへの「動機」そのものに関わることであれば、業務への影響は深刻なことにもなり得ます。
働くことへの「動機」
それでは「やる気」の「もと」である、働くことへの「動機」とはどのようなものでしょうか。
3つの大きな要素である「金銭的動機」、「社会的動機」、「自己実現動機」、そこに「人的要素」を加えることができます。これらについて簡単にご案内します。
1.金銭的動機
働くことによって生活に必要な糧(カネ)を得ようとする、最も直接的な動機です。
2.社会的動機
これには2種類あります。
(1)集団の中での自己顕示
集団の中で目立ちたい、評価されたい、権力を得たい、という欲求です。(より男性に多いと言われています)
(2)集団への帰属意識(集団の中での安定)
一定の価値観を共有できる集団の中で、安定した社会生活を営みたいという意識です。(より女性に多いと言われています)
3.自己実現動機
自分なりの目標を持ち、それを実現させたいと願っている場合、この会社で仕事をすることによってその希望がかなえられると思えば「やる気」に繋がるものです。
4.人的要素
優れた上司・リーダーが持つ引力・魅力によって、社員の仕事への意識を増進させ、目標達成に働きかけることができるものです。
「動機」は人それぞれ
5つの「動機」をご案内しましたが、人が持つのは一つに限定されるものではなく、複数を併せ持っています。そしてその割合も同一ではなく、人それぞれです。
*生活を維持するためにおカネが最優先で、そのために仕事をする、裕福になりたい
*この仕事で得られる名声を維持したい、職場で権力を持ちたい、目立ちたい
*この清潔な職場で良い仲間に囲まれていると幸福なので、ここで働き続けたい
*この職場で仕事をすると目指す自分の姿に近づいていけるので、ここで働き続けたい
*○○さんと共に仕事をしたい、学びたい、○○さんと一緒なら何でもできる
これらの動機のどれを持つのか、またその優先順位も人によって様々です。
自分が「昇進することが最も重要」と思っていても、部下が同様とは全く限らないのです。
組織の対応「動機付け」
それでは、社員の働くことへの「動機」に対して、社員の「やる気」を引き出すために会社が行う「動機づけ」はどのようなものでしょうか。これも簡単にご案内します。
1.金銭的動機 → ≪金銭的報酬≫
「金銭的動機」に対する動機づけは≪金銭的報酬≫です。最も具体的、定量的でわかりやすいのですが、当然ながら高いコストを伴います。経営的な視点も踏まえ、適正な制度運用は必須です。
2.社会的動機
(1)集団の中での自己顕示 → ≪適正な評価、昇進任命等≫
「集団の中での自己顕示」に対する動機づけは≪適正な評価、昇進任命等≫です。適正な評価に基づき、地位、権限、名誉を与えることによって、業務に対する前向きな姿勢が生まれます。
(2)集団への帰属意識(集団の中での安定) → ≪適切な就労環境≫
「集団の中への帰属意識」に対する動機づけは≪適正な就労環境≫です。就労環境(労働条件、職場環境など)の改善や人間関係の円滑化により、帰属意識を高めることができます。
3.自己実現動機 → ≪自己実現の場の提供≫
「自己実現動機」に対する動機づけは≪自己実現の場の提供≫です。教育、仕事の与え方、責任や権限の与え方によって、社員に「自分を活かせる」「成長できる」場であるという意識を持たせることができます。
4.人的要素 → ≪リーダー育成≫
「人的要素」に対する動機づけは≪リーダー育成≫です。会社の理念・方針を正しく理解し行動できる優れたリーダーの育成に注力します。合理的・体系的な教育と、適切な任用の仕組みが必要です。
